March 6, 2015

シンガポール



今週はシンガポールに来ています。バケーションではなく、仕事ですが。

アメリカにいたときには、アメリカと日本で頭がいっぱいだったのですが、日本に戻った今、アジアが身近に感じられ、気になります。仕事でも、アジア支社の同僚と仕事をする場面が増えて面白いです。

シンガポールを訪れるのはこれで2回目です。安全で多国籍なのが心地よいですが、何よりも気候が気に入りました。私は寒いのが苦手、東京の夏が好きです。アメリカで住んでいたシリコンバレー・サンフランシスコの天気の良さは有名ですが、私にとっては「十分に暑くならない」のが少し不満でした。特にサンフランシスコ市内は真夏でも冬のように寒くてコートが必要な日もあります。理想的にはロスの気候が好きですが、シンガポールの高温多湿な熱帯モンスーン気候も大変心地よく、快適です。外出する必要のないときに降る雨が好きですが、スコールはなかなかです(被害が出ない限り)。

今回は、事前に田村耕太郎さんの「アジア・シフトのすすめ」を読んでいたので、そこで得た知識を元に現地人の同僚とも話が弾み、一層充実した滞在になりました。リークアンユーのつくりあげたシステムの功罪について、それがもたらした繁栄と衰退についてなど、現地人から臨場感のある話を聞くことができました。本の中でも繰り返し言及されている、彼らの「日本好き」は、本当に半端ではなく、日本はアジアの「ディズニーランド」という印象、今後の日本が目指すべきはそこであるという意見には賛成です。

20年ぐらい前にアメリカに旅立った頃は、まだまだ西洋が圧倒的に魅力的で豊かに見えていました。当時、私と同世代の日本人はそうした感覚を持っていた人がマジョリティーだったと思います。アジアにも魅力はありましたが、それはどちらかというとアドベンチャー的なもので、恰好よく見えたのは西洋。国籍もそれぞれの友人たちとアメリカのキャンパスで雑談をしていて、私が"Wow, I look so Asian."(私、すごいアジア人の顔してる。)と鏡を見ながら口走ると、「それのどこが悪い!」とアジア出身の友人達が大笑いしながら反撃してきたことがありました。多分、私の発言のニュアンスに、アジア人に見えることへの誇りではなく、劣等感が滲み出ていたからでしょう。でも、気付いてみれば、今アジアの人達はとてもかっこよく見え、自分がアジア人であることには誇りを感じます。


近々、台湾にも出張で行く予定です。折角の機会なので、今年はもっとアジアについて勉強しようと思います。




February 22, 2015

JTPA Meetup @Tokyo 開催レポート



先週20日金曜日に開催されたJTPAの東京でのMeetUp、大変素敵な会になりました。お集りいただいた皆様、ありがとうございました。

定員は25名で募集したのですが、あっという間に満員御礼。waiting listの登録数もかなりあったので、枠を40名に増やしたものの、それもすぐに満員に。会場のスペースの都合でそれ以上は増やせなかったのですが、waitiling listでお待ちいただいたまま結局ご参加いただけなかった皆様、申し訳ございませんでした。会場は六本木のコワーキングスペースkatanaをお借りしたのですが、katana責任者の四柳さん、色々とご調整いただき本当にありがとうございました。

会の当日はシリコンバレー同窓会が半分、シリコンバレーに行ってみたいという方との出会いが半分という感じの内訳になりました。懐かしい方々に再開することができ、そして、シリコンバレーと日本を行き来しながら様々な面白い取り組みをされている方に多数お会いすることができ、新しい刺激を沢山もらうことができました。この会のためにはるばる名古屋から新幹線で来て下さった方もいらして、感激しました。

同窓会の分部では、実に色々な方と再会できました。例えば、2005年にJTPAで実施したシリコンバレーツアーの参加者の方が来てくれました。彼は、「ツアー最中の移動プロセスで私の車に乗せてもらいました」という当時大学生だった方。懐かしいですね。2011年のカンファレンスにご参加いただいた方もいらしてくださいました。「JTPAカンファレンスの経験(前後の企業訪問などを含め)から、多くの参加者がその後活躍をしている話をとてもよく聞きます」、今後機会があればJTPAでボランティアしたいですとのコメントをいただき、嬉しい限りです(2011年のカンファレンス、実は私は殆どお手伝いできなかったのですが、当時ボランティアしてくださった方々にお伝えしたいコメントです)。

あちらにいた時は、シリコンバレーで働いている人の話が聞いてみたいという方が、日本から人づてに訪ねて来てくださることがよくありました。そんな背景から2007年ごろに私を訪ねてこられ、当時私が働いていたオフィスをご案内して、お食事をご一緒した当時大学生の数名グループの方の1人の方も来てくださいました。そのメンバーは、今は様々な方面で活躍されているそうです。

かつてはシリコンバレーで働いていて、その際はJTPAの会にも何度かご参加いただいており、今は日本に帰国したという方々とも久しぶりにキャッチアップできました。

驚いたのは、会の当日に会うまでお互い気づかなかったのですが、23年ぶりぐらいに大昔の友人に再会できたことです。その友人は2007年頃からシリコンバレー界隈にいたそうなのですが、一度も出会うことなく私は帰国してしまいました。シリコンバレーの世界は狭いので、業界が同じであれば日本人同士でなくても大体皆知りだったりしますが、共通の知人が多数いるにもかかわらず、これまで接触がなかったのはそれはそれで驚きです。といっても、お互いに昔とは全く違う職業・人生を歩んできていたので、名前を聞いてもわからなかったのかもしれません。向こうは結構な有名人になっていて、メディアにも出ていましたが、まさか知り合いとは。いや、ほんとうにびっくりしました。

以前にもブログに書きましたが、アメリカは国土が広いので、友人が引っ越したりする場合、よほど親しい間柄でもない限りは「永遠のお別れ」のようになってしまいがちで、大変切ないものです。日本人の場合は海外で知り合った場合でも、東京で再開できる場合が多いのがいいですね。人との出会いは大切にしていきたいものです。


February 11, 2015

JTPA代表交代とイベントのお知らせ

2008年から共同代表として運営に携わっていたシリコンバレーの日本人NPO JTPA(Japanese Technology Professionals Association)ですが、去年代表を交代し、山中仁さん堀川隆弘さんに新代表として引き継いでいただけることになりました。日本へ拠点を移したことなど、事後報告ばかりになってしまっているのですが、この件に関してもJTPAのメーリングリストではアナウンスメントを出したものの、ブログなどではまだでしたので、ご報告しておきます。新体制の詳細はこちらになります。今後、私はボードメンバーとしてご協力させていただきます。

JTPAは渡辺千賀さんらが中心となって設立されたNPOで、技術者を中心に、シリコンバレーで働く日本人および海外で仕事をすることに興味がある日本在住の人たちを支援することを主旨としています。2003年ごろからボランティアとしてお手伝いをはじめ、その後はご縁あって代表を務めさせていただきました。スタッフそして参加者の方々との交流を通じて様々な学びがありました。旧体制でボードメンバーだった渡辺千賀さん、梅田望夫さん、大澤弘治さん、金島秀人先生、佐藤真治さん、法務関係でご支援いただいたジェームズ・プレントンさん、一緒に共同代表を務めた廣島直己さん、そしてボランティアの皆様には本当にお世話になりました。この場で再度心より御礼申し上げます。

JTPAでは数々のイベントを開催してきましたが、恒例のイベントとなったギークサロンには特に思い出が沢山あります。企画会議で、「シリコンバレーでサロン文化を復活させましょう!」と冗談交じりに言ったら、是非やりましょう、ともう梅田さんがスケジュールを取りだして一番初めのホストになる調整をしてくださり、そして渡辺千賀さんや大澤さんも続いて主催、その後も会に集まってくださった方の中から次のホストになりますという方が次々と現れて盛り上がりました。JTPAはそんな気軽なのりの雰囲気がとても素敵なところです。ギークサロン、サイトのログを見たら、2005年の8月に第一回目があり、これまでに93回開催しているのですね!シリーズが始まったばかりのころは、梅田さんのオフィスの5畳ぐらいの狭いスペースで開催していて、10名程に人数制限してはいたものの、それこそすし詰め状態で技術が好きな人たちが集まって楽しく議論していました。夜の7時ぐらいから始めて、深夜を回ってもまだ続き、朝の4時ごろまで技術についてあれこれ話していたことも。あの初期のメンバーの皆さんと過ごしたそうした時間、大切な思い出です。

新代表の山中さんと堀川さん、才能に溢れた先鋭なる現役エンジニア・起業家です。きっとJTPAを次のステージに引き上げてくださると思います。さて、今月は山中さんも堀川さんも東京、折角なので何かイベントを東京でやりましょうという話になりました。そこで、2月20日金曜日にネットワーキングイベントを開催します。シリコンバレーに興味のある方、またはシリコンバレーで仕事をしたことのある方などが対象、気軽な交流会になる予定ですので、ご興味のある方は是非ご参加ください。お申し込みはこちらから。会場は六本木のコワーキングスペースのkatanaです。六本木で丁度おなじ日、来日しているかのピーター・ティエール氏の講演があるようですが、JTPAの会はそちらが終了したぐらいの時刻に始めます。私も参加させていただくことになりましたので、皆様にお会いできるのを楽しみにしております。


それでは今後ともJTPAをよろしくお願い致します。

October 26, 2014

東京に引っ越しました|引っ越してきていました


ご挨拶が大変遅くなってしまいましたが、今年初めにサンフランシスコから東京に拠点を移しました。

東京に転勤する話が去年年末に急にまとまり、ほぼ数週間で各種手続きを済ませ、荷物を大慌てでまとめての引っ越しでした。また、東京に移ってからもアメリカへの出張がたび重なったり、新居がなかなか決まらなかったりで、ばたばたしているうちに、早いもので、気付けばもう秋になっていました。機会があるたびに局所的にご挨拶してはいたのですが、まだまだ殆どの方にはきちんとお話できていなかったので、ご挨拶も兼ねてブログ記事を書いておこうと思った次第です。

ほぼ20年近くのアメリカ生活でしたが、そのほとんどをサンフランシスコベイエリア・シリコンバレーと呼ばれている地域で過ごしました。アメリカでのキャリアをソフトウェアエンジニアとしてスタートして長年働いていましたが、近年では日本とのつながりを絶ちたくないという理由もあって日米間をとりもつようなビジネス系の仕事にシフトし、日米を頻繁に行き来していました。今回はご縁あって、日本のお客様やチームの皆様とより密接にお仕事をさせていただくために東京に転勤しましたが、出張やバケーションで来るのと、「住む」のはやぱり感覚が違います。どういう訳か、やたらホッとして、「帰る国があるっていい」と感じるのです。出張で日本に来ていた時は、またアメリカに帰るという前提があったからか、このように感じませんでした。日本に拠点を移した今も、アメリカにはよく出張しますが、仕事が終わって、さてこれから日本に「帰る」という感覚が、言葉ではうまく説明できないですが、アメリカに住んでいた時に日本出張を終えて向こうに帰るという感覚と明らかに違うのです。(長年海外に住んでいて日本に戻られた経験のある方、どんな風に感じていらっしゃるのか興味深いです。)アメリカは自分にあらゆるチャンスを与えてくれた国で、合理性だけでどんどん物事をポジティブな方向に動かしていくことができる素晴らしい国、これからも関係を続けたいですが、自分の国はやはり日本だと感じます。

それほど長い間アメリカに住んでいたのなら、「浦島太郎状態ですか?」とよく聞かれるのですが、そうでもない(ハズ)だと(少なくとも自分では)思います|願っています。インターネットが出現し、日本のニュースを逐次入手することができ、SNSなどがある時代であったことは大変幸いでした。また、アメリカに移ったばかりのころは、そのうち日本に帰っても知り合いはほとんどいなくなってしまうのではないかと思いましたが、幸運なことにシリコンバレーという場所にいたため、その土地柄、日本企業が軒並みオフィスを構え、日本から駐在、留学で来ている方を中心に、多数の日本出身の方とお付き合いさせていただくことができました。また、そうした人たちが順次日本に帰国されるので、日本の知り合いは予想に反して増え続けることになり、東京に帰ればアメリカで知り合った人たちとまたお会いできるという素晴らしいサイクルが出来上がっていました。シリコンバレーにいると、日本人であるという理由だけで日本から来た業界のキーパーソンの方々に私でもお会いすることができたりするので、日本のビジネス事情は東京にいるよりもよくわかるようになったかもしれません。アメリカでは人の移動が激しく、知り合いがよく引っ越しますが、国が広いので、よほど懇意なお付き合いである場合を除いて「永遠のお別れ」のようになってしまい非常に切ないものです。SNSが出現してからはそこでつながりを保てるようになりましたが、日本人の場合は東京に帰るとリアルでもお会いできる方が多く、大変幸運に感じます。


さて、東京に移って、やっと新居が決まったものの、持ってきた荷物が全部収まらず、それを片付け、引っ越しの箱最後の一つがやっとなくなったのがつい先日のことです。荷物を詰めるのも引越し業者さん任せにして、色々と手続きに飛びまわっていたので、収納スペースにしまい込んであった記憶にないモノたちが結構な量になっていたことが、日本の新居に荷物を搬入してもらう段階になってわかりました。収納庫に入っていたガラクタやゴミも全部箱につめてあり、(本当にゴミだけが入っていた箱もいくつかありました)開封時に愕然としました。アメリカで小さ目のアパートだと思っていた空間に収まっていたた家具のサイズも、想像で把握していたサイズと実際のサイズにかなり乖離があり、新居にうまく収まりません。10個ほど持ってきた本箱が特に問題で、無理やり並べたら、居住空間というより「倉庫」のようになってしまい、半分を処分することに。本棚に入るはずだった本の山で、床はほとんど埋め尽くされ、処分することにした本棚や他の家具が浴室にも玄関にも溢れかえり、蟹歩きで生活する毎日でした。皮肉なことに、処分した書籍のほとんどは、電子化が遅れていたためにアマゾン・ジャパンに40%+の郵送料を払ってアメリカまでわざわざ取り寄せた日本のものばかり。長いながい時間をかけてやっと片付けをすませ、ルンバが稼働するようになった時には本当にホッとしました。


そんなこんなで、なんとか東京生活を軌道に乗せつつあります。ご挨拶が遅くなってしまった皆様、本当に申し訳ございませんでした。東京近辺の皆様、お時間・機会のあるときにお声掛けいただければ嬉しいです。アメリカ・ベイエリア|シリコンバレーの皆様、またそちらに帰った時、日本に帰省されたときにお話できるのを楽しみにしております。




March 25, 2012

iPad活用法 ~ 医療業界の場合

新しいiPadを手に入れたところですが、そちらのレビューは既に出尽くしているので、iPadを活用した医療の話をご紹介します。












ちょと前のことになりますが、iPhoneやiPad、クラウドなどITを積極的に取り入れた医療環境の革新に取り組んでいらっしゃる神戸大学病院の杉本真樹先生とそのチームの皆さまがベイエリアを訪問中のところ、飲茶ランチをご一緒してお話する機会をいただきました。医療とテクノロジーの融合についてあれこれ話が盛り上がり、とても楽しい一時でした。メンバーが揃って飲茶のテーブルにいたところ、まず挨拶がわりにと杉本先生が鞄から取り出されたのが上の写真にある臓器の立体モデル。患者さんのCTから3Dプリンタを使い樹脂で作ったものだそうです。患者さんの臓器を「手にとって」手術前にシュミレーションをしたりすることができるようになり、臨場感のある練習が可能になります。臓器立体モデルの後に、プレゼントにいただいたのが杉本先生らの著書「新IT医療革命」。

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「新IT医療革命」に詳しく書かれていますが、杉本先生らチームの取り組みの中心は、iPadからクラウド上に保管されたデータを利用するところにあります。iPadは軽量で手軽に持ち運べ、バッテリーも長時間持続、起動時間も短いので、そこに患者さんのデータ(手術の記録、画像、血液検査の結果、入院中の生体情報など)を入れていおけば病院内でも出張医療であっても、すぐに参照することができます。アナログなデータの持ち運びやアクセスに時間がかかっていたところを省くことができ、緊急性のある現場でも大活躍するデバイスがiPadなのです。手術室にも手軽に持ち込め、キーボードがないので衛生面でも大きなメリットがあります(キーボードにはバイ菌が一杯で、病院でもそれがもとで感染が進むことも多いそうです)。

「新IT医療革命」では、ソフトバンクの孫さんと医師達の対談が中心に話が進みます。電子カルテというのはだいぶ前からできてきているそうですが、問題は規格が統一されていないことだといいます。その規格を国家が統一して「医療クラウド」なるものをつくればよいという考えには孫さんも強く同意しています。孫さん曰く、患者の情報が国家規格の医療クラウドに入っていれば、どこからでも自分の医療データにアクセスできる、「例えば、旅行先の岡山で事故に遭った。そのとき、普段の自分のかかりつけのお医者さんが持っている持病とかの情報を、その事故に遭った先のお医者さんが共有して見ることができれば、助かる確率が高まる」。高度なセキュリティのシステムに守られていれた「医療クラウド」にデータが保管されていればこうしたことが実現するのです。そして、事故現場や輸送期間中に活躍するのがiPadなどのモバイルでのデータ分析。一刻を争う現場ですぐにデータ分析を始めることができるのです。

なお、杉本先生は、医療用画像処理ソフト「OsiriX」(オザイリクス)の開発者の一人です。OsiriXのiPadアプリを利用して、CTスキャンから取り込んだ画像を見ながら手術を行う様子はこちらのビデオでも紹介さています。医療用画像といえば、DICOMがフォーマットとして標準なのですが、私は昔、DICOMメタデータ処理の機能を某著名画像処理ソフト用に実装したことがあり、こうしたソフトを見るのはその時を思い出してちょっとした感激がありました。



テクノロジーが医療の現場をどんどん進化させていき、ネット、iPadやそのアプリの普及によって誰でもその優れたサービスが手軽に利用できるようになってきたのはありがたいことです。Wifi体重計のことを以前書きましたが、日本に住む両親にもこの体重計をプレゼントしました。「今からコレに毎日乗る癖をつけておけば、遠距離からでも何かあったらわかるようになるからね。それに、テクノロジーを使う練習をすればボケ防止になるし。」と親孝行なのか嫌味なのかが微妙なコメントをつけて贈ったのですが、結構気に入って使ってくれているようです。Withingsには血圧測定器もあってそちらもプレゼントしたかったのですが、これはiPadかiPhoneがないと使えなく、iPhoneはもちろんiPadもまだ所有していない両親にはどうしようかなと思っていたところ新しいiPadを買ったので、お古のiPad2と一緒に送ったところです(サプライズでこっそりと)。両親とも「iPadなどいらん」と言っていたので、さてどうなることやら。



January 19, 2012

Googleのself-driving carをミタ


年が明けて間もないその日、友人とサンフランシスコで昼食会をし、うららかな午後の日差しの中ハイウェイ280を南下していると、ピカピカしたものを回転させながら通り過ぎる車がいきなり眼中に。一瞬、パトカーか、と思いましたが、そうではなく噂に聞いていた、かのGoogleのself-driving carではありませんか。グレーのプリウスに大きくGoogleのロゴ、上で回転しているのはLIDARセンサー。自動操縦車といっても、前部座席に人が2人ちゃんと乗っていました。目下のところ、完全無人の車両が公共道路を走ることが合法なのは米国ではネバダ州だけだそうです。ネバダ州で合法なのはGoogleが説得したからだとか。

自動操縦車の実物が走っているのを見たのはこれが始めて、かなり感激しました。しばらく尾行しつつ、走りながら右に左に車を近づけて中を覗き込み、写真を取ったりとはしゃいでしまいました。そのGoogle車はハイウェイでかなり人目を引いていましたが、ひょっとしたら私の方が目立っていたかもしれませんね。大昔、学生時代に履修したArtificial Intelligence(人工知能)の授業を思い出しました。使われていた教科書にはニューラル・ネットワークを利用したAlvinnという実験段階にある自動操縦車らしきものの記述があり、そのビデオを見た記憶があります。Artificial Intelligenceというロマンのある響きに心躍らせながら履修したクラスでしたが、サイエンス・フィクションから思い描く世界と、当時実現可能だった現実との乖離になんとなく落胆しながらLispで色々なプログラムを書きました。あれからかなりの年月が経過して、ついにGoogleの実験車がハイウェイを走行しているのを目撃したのです。John McCarthyは去年他界してしまいましたが。アップルはiPhone 4SでSiriの実装をリリースしたし、ずっと長い間サイエンス・フィクションの世界で思い描いていたものが、ようやく現実のプロダクトになるのを体験するのはわくわくしますね。今年もAI分野では面白い発表が沢山ありそうです。














ハイウェイで撮影したGoogle車の写真をFacebookに投稿したら「Like」ボタンを押してくださった方が多数いましたので、ブログでも公開することにしました。

そんな訳で、新年おめでとうございます。本年度もよろしくお願いいたします。


December 5, 2011

古くて新いもの:アップルのテレビへの取り組みは


しばらく前にプロダクトマネジメントの良書としてご紹介したMarty Cagan著の「Inspired」ですが、今回はそのブログエントリーの一つ、「The New Old Thing」(古くて新しいもの)を取り上げることから[1]

“What’s going to be the next new thing?” 
製品開発をするにあたって、次にヒットする新しいものは何だろう?

この答えは皆が血眼になって探しまわっています。

 "I have found that much more often than not, the next big thing is not something altogether new but rather a new incarnation of something old. The difference is that the new product does it so much better, faster, and/or cheaper that they end up redefining their category." 
それは全く新しいものというよりも、たいていは既に馴染みの古いものの生まれ変わりである。より改善されたもので、パフォーマンスもよくなり、安く手に入るものとして新たな立ち位置を既存のマーケットで革変を起こして確立するのだ。(それなのに、何か大きなヒットを生み出すには、全く新しいマーケットを確立しなければならないと信じている企業は多い。)

MP3プレイヤーが数多く存在していたなか、アップルがiPodとiTunesをリリースしてヒットさせたことを誰でも思いつく例としてMartyも挙げていますが、アップルは成熟マーケットでヒット製品を出すのが悪魔的に上手です。パーソナル・コンピューターもiPodもiPhoneすべて、その時点では成熟したと思われていたマーケットで革変を起こしてきました。ジョブズがテレビの開発に真剣に取り組んでいたらしきこと、それに絡んでアップルのテレビへの取り組みが随分と話題になっていますが、この歴史を考えてもそれはすごく自然な流れです。

「古くて新しいもの」をターゲットにすれば、マーケットは既に存在するし、それは皆に馴染みのあるものだから受入れられやすい。全く新しい製品を売り出す場合でも、馴染みの深い既存マーケットの製品名を引っ掛け、その機能を一部だけ取り込み、全く新しい機能で包みこんで出すのもその手。以前このブログでも書きましたが、iPhoneの場合も、電話の機能はおまけで、実はアップルが売りたかったのは超小型コンピューター。「phone」という世の中の誰もが馴染みのあるストリングが製品名に入っていたから、この全く新しい製品は消費者に容易に受入れられました。きっとアップルはテレビでも同じことを試みようとしているのでしょう。「TV」というなじみのあるストリングがついた「Apple TV」というセットトップボックスが既にありますが、これとは別にテレビらしきものをつくっているのだとすると、そこには従来のテレビ的機能もあるでしょうが、きっとそれは入り口にすぎず、その奥にはクリエィティブな新世界が広がっているにちがいありません。

Marty Caganの先ほどのエントリーに戻りますが、彼は成熟マーケットで勝つ製品を作るために大切なのは次の2点だといいます:

1. ターゲット市場と今ある製品の不十分なところを理解すること
2. それまでは不可能だった、または実用の目処が立たなかった新しい技術的ソリューションに注目すること

iPhoneやiPadなどのポータブルな小型端末があり、iCloudですべての端末のコンテンツが共有でき、Siriのような音声認識の機能が実用化された今、その環境で皆が共有できるリビングルームの大画面に期待されることは何なのか。アプリ開発者コミュニティを巻き込んだ参加型の環境になれば、そこからも新しいクリエイティブな用途が続々と出てくるでしょう。


ここ数日、アップル関係の分析で著名なアナリスト、Gene Munsterの予測がメディアで話題になっています。彼によると、アップルのテレビへの取り組みは次のようなものだそうです:

1. 既存のApple TVのようなセットトップボックスではなく、液晶ディスプレイのついた独立型のTVセット(ユーザはセットトップボックスを接続する手間を嫌うため)

2. サイズは何種類も用意している

3. 市場に出回っている普通のテレビの倍ぐらいの価格設定

4. 他のアップル製品およびその機能との連携:iPhone、iPadだけでなくSiriでコントロールできる。iTunesからゲームなどのコンテンツをダウンロードでき、iCloud経由でコンテンツがシェアできる。

5. チャンネルのコンセプトではなく、コンテンツ(例えばESPN)を直接呼び出せる

6. 1012年のクリスマスシーズンに向けて売り出される

(以上、Business Insiderより)

(1)については、テレビ買換えの出費を渋る消費者を見逃すのはもったいないので、中間移行手段として既存のApple TVセットトップボックスをアップデートしたものも同時に売りだすのではという説もあるようです。アップルは、Boot Campを用意してWindows OSをマック上で使えるようにしたなどの例でも、潜在ユーザの獲得が上手です。また、古くはClassic OSアプリのOS X上でのサポート、プロセッサをPower PCからIntelに切り替えたときもRosettaを提供するなど、製品上の大胆な変更をした場合に既存ユーザを逃さないことに手抜かりがありませんでした。Apple TVセットトップボックスの$99という値段は「お試し」価格として魅力的ですし、既存のApple TVセットトップボックスのユーザのことも考慮しているでしょう。こう考えると、Google TVがソニーTVへの組み込み型とLogitechのセットトップボックスのモデルと2通り出してるのと同じように2つオプションを出してきても不思議はありません。

 (5)について、John Gruberが「アプリが従来のチャンネルのような役割を担うようになってきている」と言っていますが同感です。(3)については、既に他のアップル製品がアップルブランドのプレミアム価格で成功していることを考えれば、高めのお値段となるのは当然といえましょう。


新しいテレビへの取り組みをしているのはアップルだけではなく、グーグルや大手家電メーカーなど動きが激しい。古くてとてつもなく巨大なテレビのマーケットで、あっといわせる革変を成し遂げるプレヤーは誰なのか。その辺りから目が離せないこの頃であります。


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[1]この本はもともとMartyが個人ブログで書いてまとめていたものなので、今でもブログサイトではその内容が読めるようになっています。