アマゾンと書籍の電子化のあたりで議論が盛り上がっている。私は米国に住むようになってもう長いのだが、当然、日本の書籍が続々と電子化されるのを心から待ち望んでいる。これまでも、海外で生活していてストレスが溜まることの一つは日本の書籍の入手だった。実用書は英語圏で出版されているものを読むことが多いものの、長い時間をかけて開拓して愛読している日本の作家は多いし、娯楽その他でも日本の本は大好きなので、それらが手軽に入手できないのは辛い。ご存知のように日本書籍の電子化は時間がかかっているから、紙の本を買うことになるのだけれど、入手方法は限定される。ベイエリアには紀伊国屋が何軒かあるものの、書籍数はかなり少ないので、大半の日本書籍はアマゾンジャパンから取り寄せてきた。問題は「どうやって本を選ぶか」だ。
書店に足を運んでパラパラやることができない状況での本選びは、かなりの部分を推測に頼る手探り作業だ。アマゾンで適当に選んで注文すると、大抵3冊に1冊ぐらいの割合でハズレである。「なか見!」機能のついている本は、大体の内容が把握できていいけれど、この機能のない本を、サイト内にあるカスタマーレビューを読んだりオススメ機能から選んでもうまくいかない。レストランを選ぶときにはレビューサイトを参考にすると失敗が少ないが、それは人間の味覚にはそれほど個人差がないからだ。本以外の製品をオンラインで買うときも同じで、レビューサイトのコメントはかなり参考になる。しかし、書籍のように、その評価が個人の興味の対象や嗜好に激しく依存するものは、「みんなの意見」の集積があまりあてにならない。これは、ベストセラーのような大衆受けするものから外れるほど顕著になる。
結局、自分と読書傾向や興味の対象が似ている人がブログで書いている書評を参考にするのが一番確実というところに落ち着いた。当然といえば当然だが。私はそういう人のブログで面白そうな本のレビューがあると「ほしい物リスト」にどんどん追加していき、それを定期的にアマゾン・ジャパンに発注している。この間もこの方法で50冊ぐらいまとめて取り寄せたが、ハズレは3冊ぐらいしかなかった。33%のハズレ率を6%に減らすことができるのである。
そこで本題なのだが、書籍の電子化が進むと、皆が海外居住者のような状況に置かれることになる。店舗も当分の間は残るだろうが、その数は減るし、電子版だけで出版される本も増えてくる。書店に立ち寄って、ふらふらしながら本を手に取り吟味するというプロセスはオンラインでのアクティビティに取って代わるのだ。電子書籍では、いわるゆ「在庫」というものもなくなるから、選択できる本の数も無限に増えてくる。その本の海の中から自分の欲しい本をいかに効率よく見つけることができるかが課題になってくる。このあたりの問題をうまく効率化できるソーシャルな機能や、ターゲットを明確にした書評サイトは電子書籍の世界で重要な役割を担うことになると思う。
また、ハズレを少なくするというよりも、ハズレが出た場合のコストを軽減するためのソリューションも課題となってくるであろうか。オンランショップで買ったものは「返品」という形でハズレのケースに対応できるが、電子書籍の場合はどうだろうか。アマゾンが、Netflix映画レンタルのスタイルで一定金額を払えば本が読み放題のサービスを開始すると噂されているが、政治的問題が上手く解消されてこれが実現すればハズレ問題は解消できるし、所有するよりも借りるというスタイルが本の場合にも定着してくるかもしれない。いずれにせよ、映画や本のように個人的嗜好に大きく依存するようなものは、効率化されたソーシャル機能がその選択に大きく貢献することは間違いない。
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