「本書ではジョブズのプレゼンテーションを分析し、聴衆を魅了するテクニックの数々を初めて明らかにする。それだけではない。本書を活用してジョブズのスキルを修得し、そのテクニックを活用すれば、彼と同じように聞き手の心を動かし、また聞きたいと思われる話ができるようになる。」
、という魅惑的な一節がプロローグにあるが、これは大変な良書。
プレゼンのマニュアル本は多数あるが、ジョブズという大変注目されている話題の人物が題材になっている本書は最後まで楽しんで読みきることができた。プレゼンのノウハウだけでなく、ジョブズの生き方や考え方も折り混ぜて、陳腐なマニュアル本ではなく情熱的なストーリーのある展開になっている。ジョブズのプレゼンのごとく、ポイントをおさえて明快な記述が読みやすい。9月1日に開催されたアップルのミュージックイベントでジョブズのスピーチが生中継されるのを聴いていたが、本に書いてあるテクニックが実際に使われる度に頷いてしまうなど、コンテンツ以外のところでも倍楽しめた。過去のスピーチの録画もYouTubeにあがっているものを時間があるときに改めて観てみようと思う。記述されている技法はプレゼンに限らず、文章を書くとき、人を説得したいときなど日常のあらゆる場面で手軽に活躍できる秘訣が満載なので、公の場でプレゼンをする機会はないという人にもおすすめめできる。
本書はカーマイン・ガロ氏の日本語翻訳だが、日本語版は外村仁氏の解説が巻末に付録として付いているのが特典。シリコンバレー在住で、アップルにも在籍されていた外村氏から日本の皆さんへの愛情のこもったメッセージは日米の文化の違いもふまえて書かれており、本体を読む前に一読するとよいと思う。英語版はKindle経由でも安く早く購入することができる世の中になったが、こうした価値のある解説が付いているものはあえて翻訳版を選びたい。
私がソフトエンジニアになったばかりの始め3年ほどの間、ローカリゼーションやインターナショナリゼーションの仕事をしていた時期があった。要するに、シリコンバレー本社でUSマーケット用に書かれたソフトのコードを書き換え、UIの翻訳や文字サポートも含め、日本や他のアジアの国、ヨーロッパなどの市場用に作り直す仕事だ。日本のマーケットは消費者の要求のスタンダードが高いので、他のマーケット用には直さないようなバグも日本語版だけ特別に直したり、機能も日本語版だけ付け加えたりということがよくあった。結果、日本語版の方がオリジナルのUS版より仕上がりが良くなることも多々あり、そこが国際化の仕事の面白いところであった。書籍の翻訳もしかり、優秀な監訳者、解説者のために翻訳版にプレミアムが付いてオリジナルよりもバリューが高くなる良い例が本書である。
カーマイン・ガロ
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