November 27, 2011

【書評】「自分のアタマで考えよう」

自分のアタマで考えよう
ちきりん
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 26


知り合いのブログで話題になっていたので読んでみました。

論理思考の本です。少子化などの社会問題からはじまり、婚活や主婦の料理プロセス比較などにまでもフレームワークをあざやかに使って分析しているのが面白いです。問題をどんどん分解して漏れなくダブりなく分類、収集したデータをあてはめ、グラフを使って視覚的に分析。問題を電動ミキサーにかけるがごとく、バリバリと論理的に解いていくのが痛快です。「知っていること」と「考えること」はまったく別モノであることを説明する序章から始まりますが、日常で物事を判断するときに、知識から結論を下さず、ちゃんとデータをもとに論理的に考えて仮説を検証していく癖をつけなければならないな、と意識させてくれる本です。ネットの力を借りれば、かなりのデータを誰でも収集できるようになった今、それを効果的に分析して論理的に「考える」力をつけることは重要なスキルとなるでしょう。

最近、日本からシリコンバレーを訪問中の大学生さんと就職やキャリアパスについて話す機会がありました。偶然そのときに話題になったのが、ちゃんと自分で「考える」ということ。世間一般、マスコミで騒がれていることが間違っていることは多々あります。その大学生さんを相手に私が話題にしたのは、「商社不要論」と「ソフトウェアエンジニアのアウトソーシング」について。日本でバブルが崩壊したころから商社不要論がマスコミで取り上げられてきました。けれども、それから20年ほどが経過した今でも総合商社はなくなってはいないし、最近の日経新聞に掲載されていた学生の人気就職ランキングでは伊藤忠商事がトップでした。「ソフトウェアエンジニアのアウトソーシング」が叫ばれ始めたのは、アメリカでドットコムのバブルが崩壊した2000年ごろ。そのまっただ中、シリコンバレーでソフトウェアエンジニアをしていた私は、変だなぁと思っていました。少なくともシリコンバレーにおけるソフトウェアエンジニアと呼ばれる仕事は、あらゆる技術的ソリューションをリサーチしながらコードに落としていくような仕事。マーケットや社内のフィードバックを迅速にとりいれて検証しながらアウトプットを出していく。ソフトウェアを主力とした企業では中枢になる機能です。ハードウェアのように、組立の詳細を仕様に落し込み、あとは工場で組み立てるだけのプロセスがアウトソースされるのとはまったく事情が違うのです。当時ソフトウェアエンジニアの仕事が先進国からなくなると言われ始めたので、大学のコンピューターサイエンス学科では人が集まらなくなって定員割れしたりしました。ところが、やはり物事の真実の原則は変わらない、アウトソースではダメだと後になって皆が気づきました。2011年の今、シリコンバレーでソフトウェアエンジニアはどこの企業でも引っ張りだこ、コンピューターサイエンスは大学の超人気学科です。

日本の教育を受けると、「考える」ことよりも「受け入れる」ことを選択してしまう方向に流れがちですが、「考える技術」を日常でも意識して積極的に取り入れていかなければならないですね。ふつうはビジネス書などで扱われるフレームワークの応用の説明などを、ビジネス書としてではなくカジュアルな雰囲気で誰でも手にとって読みたくなるような雰囲気にしてあるところも素敵な本書ですが、論理思考がより多くの人に馴染みのあるものになれば世の中も変わってくるかもしれませんね。

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