iPadが今年4月3日に発売されからしばらくになるが、折角ブログを再開したのでiPadにまつわる雑感を書いておこうと思う。
最初にiPadの発表がアップルからあったとき、Power Mac G4 Cubeのことを思い出した。そう、2000年にアップルが発売したあの立方体のモデルである。うるさい冷却ファンを取っ払い、Power Mac G4をわずか20センチ四方の箱に収めるという型破りの発想、透明なプラスチックの衣をまとった美しい姿は皆をあっといわせた。発売後、いち早くCubeモデルを取り寄せた同僚の机の周りは黒山の人だかり。お揃いのモニター、ハーマン・カードンのスピーカーなどと組み合わせて机に陳列した様はまるで美術品の展示のようで、従来の仕事場のワークスペースとはまったく違うスタイリッシュな空間を作り出していた。ところがこのモデル、見た目は素敵だが拡張性がない上に値段やスペックが中途半端。パワーユーザーにとってはPower Mac G4タワーに比べてスペックが物足りなく、一般ユーザーにとっては値段が高すぎるので廉価なiMacを買うほうが合理的、というマーケティング上の欠点があり、結局すぐに発売停止となってしまった。
iPadが発表されたとき、そんなCubeの思い出が走馬灯のように脳裏を駆け巡り「帯に短し襷に長し」の感があった。値段はWifiのみのモデルが$499からとリーズナブルなものの、ポータブルな端末としてiPhoneとノートパソコンの使い回しのどこを補完するのだろうかと。これが最初の2秒のなんとなくであった。
しかし不思議なもので、発表から予約受付までの一ヵ月半程の間、アップルのデモビデオを何度も観たり、いろいろな人の話を聞いたりしているうちに、やっぱり欲しいという気分になり、予約→発売日に購入、というお決まりの流れになった。Twitter過去ログでの推移は以下のとおり。
[発表直後]
カメラがあればちょっとした編集にも十分な大きさなのに。外付けキットが出たとしてもエレガントではない。
Wed Jan 27 2010 11:50:08 (PST)
iPadについていろいろ復習中.....。
Thu Jan 28 2010 22:40:23 (PST)
所有している15”MBPは、気軽に持ち歩くには私にはちょっと重すぎ大きすぎ。スマートフォンの小さい画面でするよりもう少し本格的に読んだり書いたりのちょっとした作業を出先でするにはiPadいいかなぁ、という気持ちになっている今日。
Sun Jan 31 2010 21:00:52 (PST)
[予約の儀]
iPad予約手続き完了
Fri Mar 12 2010 08:14:25 (PST)
[購入直後]
iPadのような玩具を手に入れた後の雨降りの日ってなんて素敵。
Sun Apr 04 2010 18:49:17 (PDT)
ノートパソコンを持って出かけるのは気合が必要だけど、iPadならストレスなく持ち運べて快適。ちょっとご飯食べに行きますというときも迷わずお供に。でも、使うかわからないのに常に鞄に入れておくにはやっぱりちょっと重いかな。iPad Airぐらいの感覚に早くなってほしい。
Tue Apr 06 2010 21:31:02 (PDT)
ざっとこんな感じである。発売日に手にしたiPadは想像を遥かに上回る素晴らしさであった。グーグルマップのレンダリングからひしひしと実感できるA4チップの高速感、モダンな石板のような洗練されたデザイン、既存のiPhoneアプリでiPad用に書き換えられたものはより大きな画面の中でダイナミックで新しい感覚を演出しており、すべてが完璧であった。「こんなにワクワクするガジェットは久しぶり!これは世界を変えるね。」と本気で感じた。購入日のお祭り騒ぎの後、しばらくの間は暇があればiPadを触っていた。
さて、購入日から約5ヶ月経過の今日、我が家にやってきたこの新しい端末の近況を最後に:
- 料理のレシピを表示しながらキッチンで使うのはお気に入り。
- セカンドモニターのようにして使うと快適。例えば、誰かのプレゼンのデモビデオをiPadで流しながら、そのメモをノートパソコンで取る。
- 映画など動画の再生は、途中で移動しなくてはならないときに簡単に持ち運べるので大変重宝している。例えば、映画鑑賞中にキッチンにお茶を取りに行ったり、部屋を移ったり。
- 写真を見るのに最高の端末。写真集、写真の多い雑誌などがもっとiPadで読めるようになって欲しい。
- カフェでゆっくりコーヒーでも飲もうというときに持って行くと優雅なひとときが過ごせる。iPhoneの小さい画面で見るよりも、iPadの画面での表示はやはり豪華だ。
正直に言うと、始めの2秒で感じたごとく、自分の今のライフスタイルには、iPhoneとノートパソコンの使い回しのフローに日常の必需品としてフィットする場面はなかった。自宅にいるときに使うのは圧倒的にノートパソコンで、外出時にiPhoneは必ず携帯するものの、使うかわからないのに取り敢えず鞄に入れておくほどiPad軽くはない。しかし、iPadがあると日常の場面がより華やかに、愉快になる。要するに、私にとってのiPadはiPhoneやノートパソコンのように毎日必ずなくては困るというものではなく、キッチンにある電動ミキサーのような位置づけである。電動ミキサーがなくても手で混ぜることはできるが、ないとちょっと不便だし、料理の仕上がりもちがう。
日常のあらゆる場面でiPadを活用し、コレがない生活は考えられないという人も周りに多数いるし、全然使わないで机の上に置きっぱなしという人もいる。人によって活用頻度はまちまちのようだ。しかし、紛れもない事実がある。それはiPadが発売されたことで紙の書籍から電子書籍への移行が加速されたことだ。米国ではアマゾンのKindleが牽引する電子書籍のマーケットがじわじわと広がりつつあったものの、iPadが発売されるまでは日本での電子書籍の実現はかなり難航しているようだった。それが、iPadのお祭り騒ぎがきっかけとなり、続々と電子版書籍がマーケットに出始めた。出版に関してiPadの影響は多大なものである。そして、なかなか離陸しなかったタブレットというプラットフォームのマーケットの展開が一気に加速した。
iPadにはまだまだ可能性が秘められていると思う。新しいプラットフォームとして世の中に姿を表し、そこに完全にフィットするコンテンツが発明されるのを待ち構えているような未来性のあるプラットフォームだと思うのだ。
3 comments:
御意。
電動ミキサーがなくても手で混ぜることはできるが、ないとちょっと不便だし、料理の仕上がりもちがう。
ええ、卵白は、手でたてた方が口の中でのとろけ具合が絶妙になるんですよね。ミキサーだと固い感じになる。
iPad Airくらいになると、電子書籍にも絶妙なサイズかな〜って思います。
それにしても写真から伝わってくる優雅さがすごい!ベストショットですね!
>Internalist さん、
お久しぶりです。
電動ミキサーの例えが意外にみなさまにウケているようです....。:)
>tkato さん、
軽くなるとまた全く違う展開になりそうですよね。サイズももう一回り小さいiPad nanoがあっても重宝するかなと感じます。
写真はBarefoot Coffeeのカプチーノです。
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